派遣の入札案件とは
公共機関でも民間企業と同様に、人材派遣サービスを利用することがあります。労働者派遣事業許可を持つ事業者にとって、これらの公共調達案件は安定した収益源となる可能性があります。

派遣の入札案件は、一般的な物品調達とは異なる特徴があります。人材サービスという特性上、価格だけでなく、派遣スタッフの質や管理体制も重要な評価ポイントになりますね。
派遣入札案件の主な種類
1. 一般事務派遣
最も案件数が多いのが事務系の派遣です。以下のような業務があります:
- 窓口受付業務:市民サービス窓口での受付・案内
- データ入力業務:各種申請書のデータ化作業
- 書類整理・ファイリング:行政文書の整理・管理
- 電話対応業務:問い合わせ対応やコールセンター業務
2. 専門職派遣
特定の資格や専門知識を要する派遣案件:
- 通訳・翻訳業務:国際会議や外国人対応
- システムエンジニア:情報システムの運用・保守
- 保健師・看護師:健康診断や保健指導業務
- 図書館司書:図書館運営支援
3. イベント・短期派遣
期間限定の派遣案件:
- 選挙事務:投開票事務の補助
- 調査員:各種統計調査の実施
- イベントスタッフ:公共イベントの運営補助
価格設定の実例と相場
単価契約型(時間単価)の例
業務内容 | 時間単価 | 地域 | 備考 |
---|---|---|---|
申請受付・入力業務 | 1,540円 | 東京都 | 一般事務スキル要 |
データ入力作業 | 1,565円 | 愛知県 | タイピングスキル重視 |
窓口対応業務 | 1,658円 | 東京都 | 接客経験優遇 |
申請書類処理 | 1,670円 | 千葉県 | 事務経験3年以上 |
研究支援業務 | 1,800円 | 神奈川県 | 専門知識要 |
給付金事務 | 1,806円 | 大阪府 | 正確性重視 |
総価契約型の例
- 無線局免許申請事務支援:約143万円(総務省・年間契約)
- 健診データ入力業務:165万円(三重県鈴鹿市・6ヶ月契約)
- 統計調査員派遣:約280万円(都道府県・3ヶ月集中)

単価設定は地域の最低賃金も考慮する必要があります。2025年の東京都の最低賃金は1,163円なので、派遣料金はそれを大きく上回る設定になっていますね。
入札参加の前提条件
必須要件
- 労働者派遣事業許可
- 厚生労働大臣の許可が必要
- 許可番号:派○○-○○○○○○
- 入札参加資格
- 各自治体の競争入札参加資格者名簿への登録
- 「役務の提供」または「人材派遣」の営業種目での登録
- 財務要件
- 資本金要件(派遣事業許可の基準:2,000万円以上)
- 純資産要件(派遣事業許可の基準:1,500万円以上)
加点要素となる認証・資格
- 優良派遣事業者認定
- プライバシーマーク
- ISO27001(情報セキュリティ)
- くるみん認定(子育て支援)
落札のポイント
1. 価格競争力の確保
- 派遣スタッフの稼働率を高めて単価を抑える
- 管理費用の効率化
- 複数案件の同時受注によるスケールメリット
2. 品質管理体制のアピール
- スタッフ研修プログラムの充実
- 定期的なフォローアップ体制
- 緊急時の代替要員確保体制
3. 提案書作成のコツ
- 類似業務の実績を具体的に記載
- スタッフの選定基準と教育体制を明示
- トラブル対応マニュアルの整備状況

派遣の入札では、価格だけでなく「総合評価方式」が採用されることが多いです。スタッフの質や管理体制など、技術点での評価も重要になります。
案件の探し方
1. 官公需情報ポータルサイト
全国の入札情報を一括検索できます。「労働者派遣」「人材派遣」などのキーワードで検索。
2. 各自治体の入札情報
- 都道府県の電子調達システム
- 市区町村の入札情報ページ
- 独立行政法人の調達情報
3. 業界団体からの情報
- 日本人材派遣協会の会員向け情報
- 地域の派遣事業協同組合
契約履行時の注意点
コンプライアンス重視
- 派遣法の遵守(派遣期間制限、事前面接の禁止など)
- 個人情報保護(公務で知り得た情報の管理)
- 労働関係法令の遵守
報告書類の作成
- 月次の派遣実績報告書
- スタッフの勤怠管理表
- 業務完了報告書
契約更新への対応
- 多くの案件で単年度契約
- 実績が良好な場合は随意契約での更新も可能
- 長期的な関係構築を意識した対応
まとめ
派遣の入札案件は、労働者派遣事業者にとって安定的な収益源となり得ます。ただし、一般的な人材派遣とは異なり、公共性を意識した対応が求められます。
価格競争力だけでなく、コンプライアンス体制やスタッフの質の確保など、総合的な企業力が問われる分野です。まずは小規模な案件から実績を積み、徐々に大型案件にチャレンジしていくことをお勧めします。
公共機関との取引実績は、民間企業への営業でも大きなアピールポイントになります。ぜひ積極的にチャレンジしてみてください。