入札保証金・契約保証金とは
公共調達における入札保証金と契約保証金は、入札参加者や契約者の信頼性を担保し、契約の確実な履行を促すための重要な制度です。本記事では、法令に基づく正確な情報をもとに、実務で必要となる知識を解説します。
保証金の種類と目的
- 入札保証金
- 入札参加時に納付
- 落札後の契約締結を担保
- 正当な理由なく契約締結を拒否した場合は没収
- 契約保証金
- 契約締結時に納付
- 契約の確実な履行を担保
- 契約不履行の場合は損害賠償に充当

法的根拠
国の契約における根拠法令
会計法(昭和22年法律第35号)
- 第29条の4第1項:入札保証金に関する規定
- 第29条の9第1項:契約保証金に関する規定
予算決算及び会計令(昭和22年勅令第165号)
- 第77条:入札保証金の免除規定
- 第100条の3:契約保証金の免除規定
地方自治体における根拠法令
地方自治法(昭和22年法律第67号)
- 第234条:契約の締結に関する規定
地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)
- 第167条の7:一般競争入札における入札保証金
- 第167条の13:指名競争入札における準用規定
- 第167条の16:契約保証金の規定
入札保証金の詳細
納付額
入札保証金の金額は、入札金額の100分の5以上(出典:予算決算及び会計令第77条)が基本です。ただし、各発注機関により具体的な率は異なります。
発注機関 | 入札保証金の率 |
---|---|
国(標準) | 入札金額の5%以上 |
東京都 | 入札金額の3%以上 |
大阪府 | 入札金額の5%以上 |
名古屋市 | 入札金額の5%以上 |
免除条件
予算決算及び会計令第77条に基づく免除条件:
- 入札保証保険契約の締結
- 保険会社との間に国を被保険者とする入札保証保険契約を締結したとき
- 資格を有する者による競争入札
- 第72条第1項の資格(全省庁統一資格等)を有する者による一般競争入札において、落札者が契約を結ばないこととなるおそれがないと認められるとき
実務上、多くの案件で条件2により免除されています。

納付方法
財務省通達(TU-20010330-1304-14)によると:
- 現金納付
- 現金の持参
- 指定預金口座への振込
- 代用証券等による納付
- 銀行振出小切手
- 国債
- 金融機関の保証
返還時期
入札保証金の返還は以下のタイミングで行われます:
- 落札者以外:開札後速やかに返還
- 落札者:契約締結後に返還(契約保証金に充当する場合もあり)
- 無効入札:無効確定後に返還
契約保証金の詳細
納付額
契約保証金は契約金額の10分の1以上(10%以上)が標準です。
契約種別 | 契約保証金の率 |
---|---|
工事請負契約 | 契約金額の10%以上 |
物品購入契約 | 契約金額の10%以上 |
業務委託契約 | 契約金額の10%以上 |
賃貸借契約 | 年額の10%以上 |
免除条件
予算決算及び会計令第100条の3等に基づく主な免除条件:
- 履行保証保険契約の締結
- 工事履行保証証券による保証
- 過去の実績による免除
- 過去2年間に同種契約の履行実績があり、誠実に履行したと認められる場合
- 契約金額が少額
- 各機関が定める一定金額以下の契約
契約保証金に代わる担保
- 金銭的担保
- 国債・地方債
- 政府保証債
- 銀行等の保証
- 保証事業会社の保証
- 東日本建設業保証
- 西日本建設業保証
- 北海道建設業信用保証
- 履行保証保険
- 損害保険会社との契約
地方自治体における取扱い
地方自治体では、地方自治法施行令に基づき、各自治体の規則で詳細を定めています。
東京都の例
東京都契約事務規則による規定:
- 入札保証金:見積金額の3%以上
- 契約保証金:契約金額の10%以上
- 電子調達システムによる入札は原則免除
免除の実態
多くの地方自治体で、以下の場合に免除されています:
- 競争入札参加資格を有する者による入札
- 過去の契約履行実績が良好な者
- 国・地方公共団体・公共法人等との契約
実務上の注意点
1. 入札公告の確認
保証金の取扱いは案件により異なるため、必ず入札公告で確認が必要です。
確認すべき項目:
- 保証金の要否
- 金額または率
- 納付方法
- 免除条件
- 返還時期
2. 保証の選択
契約保証金が必要な場合、以下から選択できます:
保証方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
現金納付 | 確実・シンプル | 資金拘束 |
履行保証保険 | 資金拘束なし | 保険料が必要 |
金融機関保証 | 信用力向上 | 手数料・審査 |
3. 書類の準備
免除申請や保険契約には時間がかかるため、早めの準備が重要です。

よくある質問
Q1. 入札保証金と契約保証金の両方が必要ですか?
A: 必ずしも両方必要ではありません。実務上、入札保証金は免除されることが多く、契約保証金のみ必要となるケースが一般的です。
Q2. 保証金が返還されないケースは?
A: 以下の場合、保証金は返還されません:
- 落札後、正当な理由なく契約締結を拒否(入札保証金)
- 契約不履行による解除(契約保証金)
Q3. JVの場合の保証金は?
A: 共同企業体(JV)の場合、代表者が一括して納付するか、構成員が出資比率に応じて納付します。詳細は発注者により異なります。
まとめ
入札保証金・契約保証金は、公共調達の信頼性を確保する重要な制度です。ただし、実務では多くの場合で免除規定が適用されています。
重要ポイント:
- 入札参加資格があれば入札保証金は通常免除
- 契約保証金は案件規模により必要
- 保証方法は複数から選択可能
- 入札公告での確認が最重要
各発注機関の規則や入札公告を確認し、必要に応じて保証の準備を進めることが、スムーズな入札参加の鍵となります。
参考資料
※本記事は2024年4月時点の法令・通達に基づいています。最新の情報は各機関の公式サイトでご確認ください。