官公需適格組合とは?力を合わせて入札案件を獲得!
中小企業の皆さん、「一社では受注が困難な大型案件」に悩んでいませんか?そんな課題を解決する制度が「官公需適格組合」です。
この制度を活用すれば、中小企業が力を合わせて大型の官公需案件を受注することが可能になります。特に近年注目されているのが、ドローン関連の組合です。
今回は、官公需適格組合の制度概要から設立手続き、実際のドローン組合事例まで、実践的な情報をお届けします。
官公需適格組合とは?制度の基本を理解しよう
制度の概要
官公需適格組合とは、中小企業等協同組合法等に基づいて設立された組合のうち、官公需の受注に関して一定の要件を満たすものとして、中小企業庁が証明する制度です。
制度の目的
- 中小企業の受注機会拡大
- 単独では困難な大型案件への参加
- 組合員企業の実績・能力の合算
- 官公需の効率的な調達
- 発注機関の事務負担軽減
- 品質・納期の安定確保
- 中小企業の競争力強化
- 技術力・経営資源の結集
- 共同事業による効率化
法的根拠
- 中小企業等協同組合法
- 商工組合法
- 商店街振興組合法
- その他特別な法律による組合及びその連合会
官公需適格組合の種類と対象組合
対象となる組合
1. 中小企業等協同組合法に基づく組合
- 事業協同組合: 中小企業者が組合員である事業協同組合
- 企業組合: 個人事業者等が組合員である企業組合
- 協業組合: 中小企業者が組合員である協業組合
2. その他の組合
- 商工組合: 商工組合法に基づく組合
- 商店街振興組合: 商店街振興組合法に基づく組合
- その他特別な法律によって設立された組合及びその連合会
組合員の要件
- 中小企業者が組合員であることが前提
- 組合員の事業分野が証明を受けようとする分野と一致していること
- 組合員が官公需の受注に意欲的であること
証明基準:7つの重要な要件
1. 共同事業の協調性・円滑性
証明基準: 組合の共同事業に関し、組合員の協調性に円滑に行われていること
必要な添付書類:
- 総会議事録、定款、組合員名簿
- 直前2年間の共同受注事業の経緯書
- 事業計画書、総会及び理事会の議事録
2. 官公需の受注に関する熱心度
証明基準: 官公需の受注に関し、熱心な指導者がいること
必要な添付書類:
- 組合指導者の組合事業に関連する経歴書
3. 共同受注体制
証明基準: ①事務局常勤役職員が1名以上いること ②共同受注担当役員が定められていること ③共同受注担当役員を含めた若干名をもって構成する共同受注委員会が設置されていること ④官公需共同受注規約が定められていること ⑤共同受注委員会が適正に運営されていること ⑥共同受注した案件に関する検査体制が確立されていること
必要な添付書類:
- 組合事務所一覧表、役職員の一覧表
- 共同受注委員会規約、官公需共同受注規約
- 直前2年間の配分状況、共同受注検査規約
4. 経理的基礎
証明基準: ①組合運営を円滑に遂行するに足りる経常的収入があること ②その他経理的基礎又は金銭的信用の面で問題がないこと
必要な添付書類:
- 決算関係書類、収支予算書
5. 社会的信用
証明基準: ①組合又は組合員に予算決算及び会計令第71条第1項各号に該当する事実がないこと ②暴力団関係等の該当事実がないこと ③その他著しい問題がないこと ④官公需の受注に関し中小企業団体中央会の指導を受けていること
必要な添付書類:
- 誓約書(暴力団関係等の該当事実なしの誓約)
6. 工事の場合の追加要件
工事に係る証明の場合は、上記に加えて以下の要件が追加されます:
- 建設業許可: 組合又は組合員が適切な建設業許可を有していること
- 技術者配置: 必要な技術者が適切に配置されていること
- 施工実績: 過去の工事施工実績が十分であること
7. 証明の有効期間と更新
- 証明の有効期間: 3年間
- 更新申請: 有効期間満了前に更新申請が必要
- 年次報告: 毎年度の活動状況報告
申請手続きの流れ:設立から証明取得まで
申請時期
- 物品納入等: 随時申請可能
- 工事: 年4回の申請時期(具体的な時期は各経済産業局に確認)
申請の流れ
1. 事前相談(1ヶ月)
都道府県中小企業団体中央会への相談
- 申請要件の確認
- 必要書類の説明
- 設立・運営に関する指導
2. 申請書類の準備(1-2ヶ月)
必要書類の作成・収集
- 官公需適格組合証明申請書(様式1又は様式2)
- 調査結果報告書(様式3)
- 定款、組合員名簿
- 決算関係書類(直近2年分)
- 共同受注規約、検査体制関連規約
3. 中央会による事実確認(1ヶ月)
都道府県中小企業団体中央会による事実確認
- 申請内容の確認
- 現地調査の実施
- 調査結果報告書の作成
4. 申請書提出(即日)
経済産業局への申請書提出(中央会経由)
- 電子メール提出(令和5年7月1日より電子化)
- PDFファイルを添付して送信
5. 審査(2-3ヶ月)
中小企業庁による審査
- 申請書類の審査
- 必要に応じて追加資料の要求
- 審査結果の決定
6. 証明書交付(即日)
証明書の交付(有効期間3年)
- 証明書の受領
- 官公需入札への参加資格取得
申請方法の電子化
令和5年7月1日より電子化:
- 従来の紙媒体提出から電子メール提出に変更
- PDFファイルを添付して電子メールで送信
- 手続きの簡素化・迅速化を実現
ドローン組合の成功事例:新たな可能性を探る
新潟ドローン協同組合の事例
設立の背景
市場規模の急拡大:
- 令和4年度の日本国内ドローンビジネス市場規模:3,086億円(前年度比33.7%増)
- ドローンサービス市場:1,587億円(前年度比38.4%増)
- 令和10年度にはドローンサービス市場が最も成長する分野と予測
設立の目的:
- 総合的なドローンサービスの受注窓口設置
- ドローンの共同利用
- 新潟県内のドローンサービス業界の活性化
- 災害時支援体制強化
事業内容
- 共同受注事業: 大型案件の共同受注
- ドローンの共同利用事業: 高額機材の共同購入・利用
- 行政との災害時応援協定: 災害対応力の強化
- ワンストップ窓口: 新潟県内ドローンサービスの総合窓口
参考: 新潟県中小企業団体中央会「設立支援事例(新潟ドローン協同組合)」
愛知水中ドローン事業協同組合の事例
設立の背景
社会課題への対応:
- 潜水士不足という深刻な社会問題
- 水中での経済活動の効率化ニーズ
- 新たな海洋ビジネスの創出
事業内容
- 潜水士と水中ドローンの融合: 人と技術の最適な組み合わせ
- 新規雇用者の教育: 潜水技術および水中ドローン操縦技術の向上
- 新事業分野の開拓: 専門的知識・技術を活用した新市場開拓
参考: 愛知水中ドローン事業協同組合
ドローンの官公需案件の実態
主要な案件分野
1. 測量・調査分野
- 林野庁「UAVレーザ測量による立木調査等業務」: 東北・中部森林管理局で実施
- 東京都「伊豆・小笠原諸島におけるドローンを活用した災害時等測量」: 希望制指名競争入札
- JOGMEC「北部九州地区ぼた山管理に係るドローン測量業務」: 一般競争入札
2. 災害対応分野
- 総務省「災害情報伝達手段としてのドローン活用に向けた検討会運営及び実証実験業務」
- 二戸地区広域行政事務組合「災害対応ドローン購入」
- 消防団「災害救助用資機材災害対応ドローン」
3. 点検・監視分野
- 国土交通省「橋梁点検でのドローン活用」: 橋梁点検車の利用不要化、コスト縮減効果
- 建築基準法第12条に基づく定期点検: 従来方法の1/2~1/8の費用で実施可能
4. 農業分野
- 農林水産省「農業用ドローンの普及拡大に向けた官民協議会」: 農薬散布、作物監視等
ドローン組合の官公需参入メリット
技術力の結集
多様な専門技術の統合
- 測量技術: 精密な地形測量・3D測量
- 撮影・画像解析技術: 高精細映像・AI解析
- 農薬散布技術: 精密農業・効率的散布
- 災害対応技術: 緊急時の迅速対応
機材の共同利用
- 高額な専用機材の共同購入・利用: 初期投資の分散
- 維持管理コストの分散: ランニングコストの削減
- 最新技術への迅速な対応: 技術革新への追従
受注能力の拡大
大規模案件への対応
- 単独企業では困難な大型案件への参加
- 複数地域での同時作業対応
- 短期間での大量作業実施
リスクの分散
- 天候リスクの分散: 複数地域での作業分散
- 機材故障リスクの軽減: 予備機材の確保
- 人的リソースの確保: 相互補完体制
官公需適格組合としての特例措置
入札参加資格の向上
- 実績の合算: 組合員企業の実績を合算して評価
- 財務要件の充足: 組合員の売上高・資本金の合算
- 技術者要件の充足: 組合員の有資格者の合算
組合設立・運営の実践的ポイント
組合員構成の最適化
専門分野の組み合わせ
- 測量・調査系企業: 測量会社、建設コンサルタント、地質調査会社
- 撮影・映像系企業: 映像制作会社、写真測量会社、画像解析会社
- 農業系企業: 農薬散布事業者、農業コンサルタント、農機具販売・メンテナンス
- 災害対応系企業: 警備会社、建設会社、通信会社
地域性の考慮
- 地域要件への対応: 地元企業としての優位性
- 広域対応能力: 複数地域での同時対応、災害時の相互支援体制
技術・品質管理体制
技術標準の統一
- 操縦技術の標準化: 共通の技術基準設定、定期的な技術研修実施
- 機材の標準化: 共通機材の選定・導入、メンテナンス体制の統一
- 品質管理の統一: 共通の品質基準設定、品質チェック体制の構築
安全管理体制
- 飛行安全の確保: 安全運航マニュアルの統一、事故防止対策の徹底
- 情報セキュリティ: 撮影データの適切な管理、個人情報保護の徹底
官公需受注戦略
得意分野の明確化
- 専門性の訴求: 組合の技術的優位性の明確化
- ワンストップサービス: 企画から実施まで一貫対応
継続的な関係構築
- 発注機関との連携: 定期的な技術説明会の実施、新技術の提案・実証
- 業界団体との連携: 関連業界団体への参加、技術標準策定への参画
設立から証明取得までの全体スケジュール
組合設立段階(6-12ヶ月)
1. 発起人会の設立(1ヶ月)
- コア企業の選定: 技術力・実績のある企業、地域での信頼性の高い企業
- 事業計画の策定: 市場分析・競合分析、事業領域の明確化
2. 設立準備・定款作成(2-3ヶ月)
- 組合員の募集: 技術的補完関係、地域的バランス、経営安定性
- 定款・規約の作成: 組合の目的・事業内容、共同受注規約の作成
3. 設立認可申請(2-3ヶ月)
- 所管官庁への申請: 必要書類の準備・提出、審査対応
4. 設立登記(1ヶ月)
- 法務局での登記手続き: 組合設立の完了
5. 事業開始・体制整備(2-3ヶ月)
- 事務局体制の確立: 常勤役職員の配置、事務所の設置・整備
- 共同受注体制の構築: 共同受注委員会の設置、検査体制の確立
官公需適格組合証明取得段階(3-6ヶ月)
1. 中央会への相談・指導(1ヶ月)
- 申請要件の確認: 必要書類の準備、指導・助言の受領
2. 申請書類の準備(1-2ヶ月)
- 証明申請書の作成: 添付書類の準備、内容の最終確認
3. 申請・審査(2-3ヶ月)
- 申請書提出: 中央会経由での提出、電子メールでの送信
- 審査対応: 追加資料の提出、現地調査への対応、証明書の受領
全体期間
- 最短: 約9ヶ月
- 標準的: 12-18ヶ月
- 複雑な場合: 18-24ヶ月
費用・期間の詳細
申請費用
- 申請手数料: 無料(中小企業庁への申請手数料は不要)
- 中央会指導料: 都道府県中小企業団体中央会への指導料(各中央会により異なる)
- 書類作成費: 必要書類の作成・準備費用
審査期間
- 標準的な審査期間: 申請から証明まで約2-3ヶ月
- 工事の場合: 年4回の申請時期のため、タイミングにより期間が変動
ドローン組合の将来性と課題
市場拡大の要因
技術革新
- AI・IoT技術の融合: 自動飛行技術の高度化、リアルタイムデータ解析
- 5G通信の活用: 高精細映像のリアルタイム伝送、遠隔操縦技術の高度化
規制緩和・制度整備
- レベル4飛行の解禁: 有人地帯での目視外飛行、物流・配送分野への展開
- 官公需での活用促進: 政府のデジタル化推進、インフラ老朽化対策
課題と対策
技術的課題
- 操縦士の確保・育成: 国家資格制度への対応、継続的な技術研修
- 機材の高度化・高額化: 共同購入による負担軽減、リース・レンタル制度の活用
制度的課題
- 安全基準の厳格化: 安全管理体制の強化、保険制度の充実
- 競争激化: 差別化戦略の明確化、技術力向上の継続
成功のポイント:実践的なアドバイス
組合設立時のポイント
- 明確な目的設定: 官公需受注を明確に目的とした組合設立
- 適切な組合員構成: 同業種・関連業種の中小企業者による構成
- 十分な資金計画: 組合運営に必要な資金の確保
- 専任体制の確保: 常勤役職員の確保
証明申請時のポイント
- 事前の十分な準備: 中央会との事前相談・指導の活用
- 完備された書類: 不備のない申請書類の準備
- 実績の蓄積: 組合としての共同事業実績の蓄積
- 継続的な運営: 安定した組合運営の実績
運営継続のポイント
- 定期的な活動: 継続的な共同受注活動
- 組合員の結束: 組合員間の協調関係の維持
- 体制の維持: 証明基準を満たす体制の継続
- 情報収集: 官公需情報の継続的な収集・活用
まとめ:力を合わせて新たな可能性を切り開こう
官公需適格組合は、中小企業が力を合わせて大型案件を受注するための強力な制度です。特に、ドローン分野のような急成長市場では、組合形式による技術力の結集と受注能力の拡大により、大きなビジネスチャンスが期待できます。
重要なポイントの再確認
- 制度の活用価値
- 単独では困難な大型案件への参加
- 組合員企業の実績・能力の合算
- 技術力・経営資源の結集
- 成功の要因
- 専門性の異なる企業による補完的な組合員構成
- 統一された技術・品質管理体制
- 継続的な技術革新への対応
- 発注機関との信頼関係構築
- ドローン組合の可能性
- 急拡大するドローン市場(2022年度:3,086億円)
- 多様な官公需案件(測量・災害対応・点検・農業)
- 技術革新による新たな用途開拓
次のステップ
官公需適格組合の設立を検討されている方は、まず都道府県中小企業団体中央会にご相談ください。専門的な指導・支援を受けながら、着実に準備を進めることが成功の鍵です。
中小企業の皆さんが力を合わせて、新たな可能性を切り開いていくことを心から応援しています。
関連記事:
- 個人事業主にも開かれている官公需。一人でも参加できる公共調達の実態と成功戦略
- 士業向けの入札案件。同業者必見!弁護士・司法書士・税理士が知るべき公共調達の実態
- 敵を知るべし!入札の参入障壁とは?中小企業が知っておくべき7つの壁と突破法
お問い合わせ: 官公需適格組合の設立や入札戦略についてご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。