経営難を救う。資金繰りの新戦略

経営難を救う。資金繰りの新戦略

中小企業の経営において、資金繰りは事業継続の生命線である。特に2025年以降、新型コロナウイルス感染症対応として措置された各種支援制度の段階的終了により、多くの企業が新たな資金調達戦略の構築を迫られている。

本記事では、最新の政策動向と制度変更を踏まえ、経営難に直面する企業が活用できる実践的な資金繰り改善戦略について詳しく解説する。特に、これまで十分に活用されていない入札案件つなぎ融資制度や、2025年から本格運用が開始された新たな支援制度に焦点を当て、具体的な活用方法を提示する。

1. 2025年の資金調達環境の変化

1.1 コロナ対応制度の段階的終了

2025年に入り、中小企業の資金調達環境は大きな転換点を迎えている。中小企業庁が公表した資料によると、新型コロナウイルス感染症対応として措置された主要な支援制度が段階的に終了している[1]。

具体的には、経営改善サポート保証(コロナ対応)が2025年3月末で終了し、コロナ借換保証についても石川県内一部地域を除いて同時期に終了予定である。また、日本政策金融公庫のコロナ特別貸付は2025年2月末で終了し、セーフティネット貸付の特別措置も2025年3月末で終了する。

これらの制度終了により、多くの中小企業が従来の資金調達手段を見直す必要に迫られている。特に、これまでコロナ対応制度に依存していた企業にとっては、新たな資金調達戦略の構築が急務となっている。

1.2 新たな支援制度への移行

コロナ対応制度の終了に伴い、中小企業庁は新たな支援制度を創設している。主要なものとして、経営改善・再生支援強化型保証制度と協調支援型特別保証制度が挙げられる[2]。

経営改善・再生支援強化型保証制度では、経営改善・再生計画を策定した企業に対して100%保証による借換支援を実施している。保証料は0.3%、上限額は2.8億円、保証期間は15年と、従来制度と比較して利用しやすい条件が設定されている。

協調支援型特別保証制度では、民間金融機関によるプロパー融資と信用保証付融資を組み合わせた協調融資を推進している。これにより、金融機関のリスク分担を促進し、より持続可能な融資体制の構築を目指している。

1.3 金融機関の融資姿勢の変化

新制度への移行に伴い、金融機関の融資姿勢にも変化が見られる。従来のコロナ対応制度では、比較的緩和された審査基準が適用されていたが、新制度では経営改善計画の策定や将来性の評価がより重視されるようになっている。

この変化により、企業は単純な資金調達ではなく、事業の持続可能性や成長戦略を明確に示すことが求められるようになった。そのため、資金調達の成功には、適切な事業計画の策定と金融機関との建設的な対話が不可欠となっている。

2. 入札案件つなぎ融資制度の活用戦略

2.1 地域建設業経営強化融資制度の概要

建設業を営む中小企業にとって、地域建設業経営強化融資制度は重要な資金調達手段である。国土交通省が平成20年11月から実施しているこの制度は、公共工事等の工事請負代金債権を担保に、出来高に応じて融資を受けることができる制度である[3]。

制度の主要な特徴として、保証人・不動産担保が不要である点が挙げられる。工事の出来高が5割に達した場合に利用可能となり、複数回の利用も認められている。融資条件は、請負金額から前払金等を差し引いた金額の範囲内で設定される。

現在、この制度は令和8年3月31日まで延長されており、多くの中小建設企業が活用している。一般財団法人建設業振興基金が窓口機能を担い、事業協同組合等が実際の融資実行を行う体制となっている[4]。

2.2 制度利用の具体的手順

地域建設業経営強化融資制度を利用する際の手順は以下の通りである。まず、建設企業が公共工事を受注し、契約を締結する。次に、発注者から工事請負代金債権の譲渡承諾を取得する必要がある。

その後、一般財団法人建設業振興基金に融資を申請し、審査を経て融資が承諾される。融資実行は事業協同組合等から出来高に応じて行われ、工事完成後に回収した工事代金により融資を返済する流れとなる。

この制度の利用により、多くの中小建設企業が資金繰りの改善を実現している。特に、大型工事への入札参加機会の拡大や、経営基盤の強化に寄与している事例が多数報告されている。

2.3 他業種への制度拡大の可能性

現在、地域建設業経営強化融資制度は建設業に限定されているが、IT、コンサルティング、調査業務等の他業種でも類似の資金需要が存在する。これらの業種では、人件費が主要コストであり、プロジェクト期間中の資金立替えが必要となる場合が多い。

政府は、スタートアップや中小企業の公共調達参加を促進する政策を推進しており、経済産業省では「スタートアップにおける公共調達促進」政策を実施している[5]。この政策では、入札参加資格の特例措置の拡充や調達情報の一元化等が進められている。

今後、建設業以外の業種についても、業種特性を考慮した包括的なつなぎ融資制度の創設が期待される。企業としては、こうした政策動向を注視し、制度拡大時に迅速に対応できる準備を整えておくことが重要である。

3. 信用保証協会の新制度活用法

3.1 経営改善・再生支援強化型保証の活用

2025年4月から本格運用が開始された経営改善・再生支援強化型保証制度は、経営改善・再生計画を策定した企業への支援を目的としている。この制度では、100%保証による借換支援が実施され、保証料0.3%、上限額2.8億円、保証期間15年という条件が設定されている[6]。

制度を活用するためには、認定経営革新等支援機関等の支援を受けて経営改善・再生計画を策定する必要がある。計画には、現状分析、課題の特定、改善策の具体化、数値目標の設定等が含まれる。

この制度の特徴は、単純な借換ではなく、企業の持続的な成長を支援することに重点を置いている点である。そのため、計画策定段階から専門家の支援を受けることが制度利用の成功につながる。

3.2 協調支援型特別保証の戦略的活用

協調支援型特別保証制度は、民間金融機関によるプロパー融資と信用保証付融資を組み合わせた新たな保証制度である[7]。この制度により、金融機関のリスク分担が促進され、より持続可能な融資体制の構築が図られている。

制度の活用により、企業は以下のメリットを得ることができる。まず、金融機関との長期的な関係構築が促進される。プロパー融資の組み合わせにより、金融機関も企業の成長にコミットする姿勢を示すことになる。

また、融資条件の改善も期待できる。協調融資により、金利や返済条件等について、より柔軟な設定が可能となる場合がある。さらに、金融機関からの経営支援やアドバイスを受けやすくなる効果もある。

3.3 創業関連保証の活用拡大

創業期の企業にとって、創業関連保証制度は重要な資金調達手段である。この制度では、創業前または創業後5年未満の企業を対象に、無担保・第三者保証人不要での保証が提供される[8]。

2025年以降、創業関連保証制度についても運用の改善が図られている。特に、創業計画の評価において、従来の財務指標に加えて、事業の革新性や成長性がより重視されるようになっている。

創業関連保証を効果的に活用するためには、説得力のある創業計画の策定が不可欠である。計画には、事業の独自性、市場性、実現可能性を明確に示すことが求められる。また、創業者の経験や専門性についても具体的に記載する必要がある。

4. 日本政策金融公庫の新制度活用

4.1 通常資本性劣後ローンへの移行

日本政策金融公庫では、コロナ特別貸付の終了に伴い、通常資本性劣後ローンへの移行が進められている[9]。資本性劣後ローンは、金融機関の自己査定において資本とみなされる特殊な融資制度である。

この制度の特徴は、業績に応じた金利設定にある。企業の業績が良好な場合は高い金利が適用されるが、業績が悪化した場合は低い金利が適用される仕組みとなっている。また、返済順位が一般の借入金より劣後するため、企業の財務基盤強化に寄与する。

資本性劣後ローンの活用により、企業は以下の効果を期待できる。まず、自己資本比率の改善により、他の金融機関からの融資を受けやすくなる。また、財務基盤の強化により、事業拡大や新規投資への取り組みが可能となる。

4.2 セーフティネット貸付の継続活用

資材費等の価格高騰対策として実施されている日本政策金融公庫のセーフティネット貸付は、2025年3月まで継続される[10]。この制度では、利益率が前年同期比で5%以上減少した企業に対して、金利0.4%での融資が提供される。

セーフティネット貸付を活用する際は、利益率減少の要因を明確に説明することが重要である。資材費高騰、エネルギー価格上昇、人件費増加等の外部要因による影響を具体的に示す必要がある。

また、制度利用と併せて、利益率改善に向けた取り組みを示すことも求められる。コスト削減策、販売価格の見直し、業務効率化等の具体的な改善計画を策定することが制度利用の成功につながる。

4.3 新規開業・スタートアップ支援資金の活用

日本政策金融公庫では、新規開業・スタートアップ支援資金制度を通じて、創業期の企業を支援している[11]。この制度では、創業前または創業後税務申告を2期終えていない企業を対象に、無担保・無保証人での融資が可能である。

制度の特徴として、自己資金要件が融資希望額の1/10以上と比較的緩和されている点が挙げられる。また、創業計画の内容によっては、自己資金要件が緩和される場合もある。

新規開業・スタートアップ支援資金を効果的に活用するためには、実現可能性の高い創業計画の策定が不可欠である。特に、市場分析、競合分析、収支計画等について、具体的で説得力のある内容を示すことが求められる。

5. 民間金融機関との効果的な交渉戦略

5.1 リレーションシップバンキングの活用

金融庁が推進するリレーションシップバンキング(地域密着型金融)は、地域金融機関と中小企業との長期的な関係構築を重視する金融手法である[12]。この手法では、財務データだけでなく、企業の技術力や経営者の資質等を総合的に評価する。

リレーションシップバンキングを効果的に活用するためには、金融機関との継続的なコミュニケーションが重要である。定期的な業績報告、事業計画の共有、課題や悩みの相談等を通じて、信頼関係を構築することが必要である。

また、地域金融機関の特性を理解することも重要である。地域金融機関は、地域経済の発展に貢献することを使命としており、地域企業の成長を支援する姿勢を持っている。そのため、地域への貢献や雇用創出等の観点からも事業の意義を説明することが効果的である。

5.2 事業性評価融資への対応

近年、金融機関では事業性評価融資が重視されている。これは、担保や保証に依存せず、企業の事業内容や成長性を評価して融資判断を行う手法である[13]。

事業性評価融資を受けるためには、事業の独自性や競争優位性を明確に示すことが重要である。技術力、ノウハウ、顧客基盤、ブランド力等の無形資産について、具体的に説明する必要がある。

また、将来の成長戦略についても詳細に説明することが求められる。市場の成長性、事業拡大計画、新商品・サービスの開発計画等について、実現可能性の高い計画を提示することが融資獲得の鍵となる。

5.3 経営者保証に依存しない融資の活用

金融庁は、経営者保証に過度に依存しない融資慣行の確立を推進している[14]。経営者保証に関するガイドラインに基づき、一定の条件を満たす企業については、経営者保証を求めない融資が拡大している。

経営者保証を外すためには、以下の条件を満たすことが重要である。まず、法人と経営者の関係の明確な区分・分離が必要である。法人と経営者の間の資金のやりとりを適切に把握し、利益相反取引等を適切に処理することが求められる。

また、財務基盤の強化も重要な要素である。十分な資産・収益力を有し、適切な財務諸表等を作成・開示することが必要である。さらに、金融機関との十分な情報開示・対話を継続することも条件となる。

6. 業種別の資金調達戦略

6.1 IT・システム開発業の戦略

IT・システム開発業では、人件費が主要コストであり、プロジェクト期間中の資金立替えが課題となることが多い。建設業のような包括的なつなぎ融資制度が存在しないため、多様な資金調達手段を組み合わせる必要がある。

効果的な戦略として、売掛債権を活用した資金調達が挙げられる。ファクタリング(売掛債権の売却)やABL(Asset Based Lending:動産・債権担保融資)を活用することで、迅速な資金調達が可能となる。

また、技術力を重視した融資制度の活用も重要である。SBIR制度の特定新技術補助金等の交付を受けた企業は、入札参加資格の特例措置を受けることができ、公共調達への参加機会が拡大する[15]。

6.2 コンサルティング業の戦略

コンサルティング業では、知識集約型産業の特性を活かした資金調達戦略が重要である。専門性の高い人材や独自のノウハウが主要な資産であるため、これらの価値を適切に評価してもらうことが融資獲得の鍵となる。

効果的なアプローチとして、過去の実績や顧客からの評価を具体的に示すことが挙げられる。プロジェクトの成果、顧客満足度、リピート率等の定量的な指標を用いて、事業の価値を説明することが重要である。

また、継続的な案件の確保も重要な要素である。長期契約や継続案件の存在は、安定的な収益基盤を示すものとして、金融機関から高く評価される。そのため、顧客との長期的な関係構築に注力することが資金調達にも寄与する。

6.3 製造業の戦略

製造業では、設備投資や運転資金の両面で資金需要が発生する。特に、原材料費の高騰や設備の老朽化により、追加的な資金調達が必要となる場合が多い。

効果的な戦略として、設備投資に対する政府系金融機関の制度融資の活用が挙げられる。日本政策金融公庫では、設備資金に対して長期・低利の融資を提供している。また、省エネルギー設備や環境対応設備については、特別な優遇制度も用意されている。

運転資金については、在庫や売掛債権を担保とした融資の活用が効果的である。ABLを活用することで、従来の不動産担保に依存しない資金調達が可能となる。また、取引先との支払条件の見直しも重要な資金繰り改善策である。

7. 当事務所による支援サービス

7.1 資金調達戦略の策定支援

行政書士法人ふらっと法務事務所では、企業の資金調達戦略策定を総合的に支援している。当事務所の特徴は、入札参加資格取得から資金調達まで、一貫したサポートを提供できることである。

具体的なサービス内容として、現状分析、資金需要の把握、最適な制度の選定、申請書類の作成支援等を実施している。また、金融機関との交渉に際しては、事業計画書の作成や面談の同席等のサポートも提供している。

当事務所では、これまで多数の企業の資金調達を支援してきた実績がある。特に、創業期の企業から成長期の企業まで、幅広い段階の企業に対応した支援を提供している。

7.2 入札参加資格取得と資金調達の連携支援

当事務所の独自の強みは、入札参加資格取得と資金調達を連携させた支援である。入札参加資格を取得することで、公共調達への参加機会が拡大し、安定的な収益基盤の構築が可能となる。

また、入札参加資格の取得は、金融機関からの信用評価向上にも寄与する。公共調達への参加実績は、事業の安定性や信頼性を示す重要な要素として評価される。

当事務所では、全省庁統一資格の取得から地方自治体の入札参加資格取得まで、幅広い支援を提供している。また、資格取得後の入札参加戦略についてもアドバイスを行っている。

7.3 継続的な経営支援

資金調達は一時的な課題解決ではなく、継続的な経営課題である。当事務所では、資金調達後も継続的な経営支援を提供している。

具体的には、定期的な業績モニタリング、資金繰り計画の見直し、新たな制度情報の提供等を実施している。また、事業拡大に伴う追加的な資金需要についても、適切なタイミングでアドバイスを行っている。

当事務所の支援により、多くの企業が持続的な成長を実現している。特に、創業1年目に65万円の案件から開始し、翌年には1,400万円超の大型案件を獲得した事例等、具体的な成果を上げている。

8. まとめ

2025年の政策変更により、中小企業の資金調達環境は大きく変化している。コロナ対応制度の終了に伴い、新たな資金調達戦略の構築が急務となっている。

本記事で紹介した各種制度や戦略を適切に活用することで、経営難を乗り越え、持続的な成長を実現することが可能である。特に、入札案件つなぎ融資制度や新たな信用保証制度の活用は、多くの企業にとって有効な選択肢となる。

重要なことは、自社の状況に最適な制度を選択し、適切な準備を行うことである。そのためには、専門家のサポートを受けながら、戦略的なアプローチを取ることが成功の鍵となる。

資金繰りの改善は、単なる資金調達ではなく、事業の持続可能性と成長性を高める重要な経営課題である。本記事の内容を参考に、自社に最適な資金調達戦略を構築していただきたい。


参考文献

[1] 中小企業庁「2025年以降の中小企業向け資金繰り支援制度について」
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/support/shikinguri.pdf

[2] 前掲[1]

[3] 国土交通省「地域建設業経営強化融資制度について」
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk2_000011.html

[4] 一般財団法人建設業振興基金「出来高融資制度」
https://www.kensetsu-kikin.or.jp/management/finance/vls-about.html

[5] 経済産業省「スタートアップにおける公共調達促進」
https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/public_procurement.html

[6] 前掲[1]

[7] 前掲[1]

[8] 一般社団法人全国信用保証協会連合会「信用保証制度について」
https://www.zenshinhoren.or.jp/

[9] 前掲[1]

[10] 前掲[1]

[11] 日本政策金融公庫「創業融資について」
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/sogyoyushi.html

[12] 金融庁「地域密着型金融の推進について」

[13] 金融庁「事業性評価融資について」

[14] 金融庁「経営者保証に関するガイドラインについて」

[15] 前掲[5]


著者について
しおさん - 行政書士法人ふらっと法務事務所
入札参加資格取得と資金調達支援を専門とし、多数の企業の成長を支援してきた実績を持つ。特に創業期から成長期にかけての企業支援に豊富な経験を有する。

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