会社定款と入札案件(創業時戦略) - 創業時に知っておくべき入札参加への道筋

創業時における会社設立は、将来の事業展開を左右する重要な局面です。特に、官公庁の入札案件への参加を視野に入れている場合、定款の作成段階から戦略的な準備が必要となります。

本記事では、行政書士の視点から、創業時に気をつけるべき定款と入札参加資格の関係について、法的根拠に基づいて詳しく解説いたします。


定款の事業目的と入札参加資格の密接な関係

会社法における事業目的の法的位置づけ

会社の事業目的は、会社法第27条に定められた定款の絶対的記載事項の一つです。この事業目的は、単なる形式的な記載ではなく、会社の権利能力の範囲を決定する重要な要素となります。

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会社法第27条(定款の記載又は記録事項) 株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない:

  1. 目的(事業目的)
  2. 商号
  3. 本店の所在地
  4. 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
  5. 発起人の氏名又は名称及び住所

事業目的を定めなかったり、その内容が登記できないような場合には、定款そのものに効力が生じません。また、会社は原則として定款で定められた目的の範囲内でしか事業をすることができないため、将来の入札参加を見据えた適切な記載が不可欠です。

許認可申請と事業目的の関係

許認可申請時は、定款にその事業が「事業の目的」に記載されている必要があります。これは建設業許可をはじめとする各種許認可において共通する要件です。

入札参加を目指す場合、多くの業種で何らかの許認可が必要となるため、創業時の定款作成段階で将来の事業展開を十分に検討し、幅広い事業目的を記載しておくことが戦略的に重要となります。


新設法人の入札参加資格取得

決算未到来でも取得可能な全省庁統一資格

新設法人にとって朗報なのは、全省庁統一資格が決算未到来でも取得可能であることです。

新設法人の申請における特徴

項目 通常の会社 新規設立法人
登記事項証明書 必要 必要(法務局で取得可能)
納税証明書 必要 必要(決算未到来でも取得可能)
財務諸表 必要 提出不要(決算未到来のため省略可能)

申請手引きにも「新規に設立した会社が、決算前に資格取得することは可能です」と明記されており、創業直後からの入札参加が制度的に保証されています。

新設法人の等級格付けへの影響

ただし、新設法人の場合、以下の数値が「0」となるため、等級は「D」になる可能性が高くなります:

  • 実績販売高(売上高): 決算未到来のため「0」
  • 流動比率: 財務諸表がないため算出不可で「0」
  • 営業年数: 設立から1年未満のため「0」

これらの制約はありますが、等級に関係なく早期に全省庁統一資格を取得し、実績を積み重ねることで、次回更新時により高い等級を目指すことが可能です。


創業時の資本金設定戦略

入札参加資格への影響

入札参加資格の審査は、企業規模や資本金などを基準とした審査で判断されます。資本金は等級を決定する要素の一つであり、企業の信頼性を示す指標として機能します。

建設業における特別な考慮事項

建設業を営む場合、許可の種類によって資本金要件が異なります:

一般建設業許可

  • 資本金についての要件はない
  • 500万円以上の自己資本または資金調達能力の証明が必要

特定建設業許可

  • 資本金2,000万円以上が必要
  • 新規設立の場合は4,000万円以上で証明可能

戦略的な資本金設定のポイント

  1. 信用力の確保: 取引先や金融機関からの信用獲得
  2. 許認可要件の充足: 特定の許認可で必要な資本金要件のクリア
  3. 税務上の考慮: 資本金1,000万円未満は消費税免税事業者となる

創業時に準備すべき体制と資格

建設業の場合の標準的な流れ

建設業で入札参加を目指す場合、以下の流れが一般的です:

  1. 建設業許可の取得
  2. 決算報告の実施
  3. 経営事項審査(経審)の受審
  4. 入札参加資格申請

この流れを踏まえ、創業時から必要な技術者や有資格者の確保、適切な組織体制の構築を計画的に進める必要があります。

新設法人でも活用可能な制度

完全な入札参加資格を取得するまでの間も、以下の制度を活用して実績を積むことが可能です:

  • 少額随意契約: 50万~250万円未満の小規模案件
  • SBIR制度: 革新的技術をもつ中小企業向けの特別枠
  • 緊急時対応: 災害時や事故対応などで資格不要の特例

定款作成時の戦略的ポイント

事業目的の幅広い記載

将来の事業展開を見据え、可能な限り幅広い事業目的を記載することが重要です。特に建設業の場合、以下のような記載方法が効果的です:

まとめて記載できる業種例

「土木工事」として記載可能

  • 土木一式・とび土工・石・鋼構造物・舗装・浚渫・塗装・水道施設・解体 (1級土木施工管理技士で対応可能な業種)

「建築工事」として記載可能

  • 建築一式・大工・左官・とび土工・石・タイルレンガブロック・屋根・鋼構造物・鉄筋・板金・ガラス・塗装・防水・内装・熱絶縁・建具・解体 (1級建築施工管理技士で対応可能な業種)

個別記載が必要な業種

以下の業種は個別に記載する必要があります:

  • 管工事
  • 電気工事
  • 通信工事
  • 機械器具設置工事
  • 造園工事
  • 消防施設工事
  • 清掃施設工事

変更コストの考慮

事業目的の変更は株主総会決議が必要で、手間とコストがかかります。創業時に十分検討し、将来の事業展開を見据えた包括的な記載を行うことで、後の変更を最小限に抑えることができます。


早期参入のメリットと戦略

段階的な実績構築

新設法人であっても、小規模案件から始めて段階的に実績を構築することで、将来的により大きな案件への参加が可能となります。

実績構築の流れ

  1. 少額随意契約や特例制度の活用
  2. 全省庁統一資格の取得(D等級)
  3. 実績を積んで次回更新時により高い等級を目指す
  4. 地方自治体の入札参加資格も順次取得

ノウハウと関係性の構築

早期から入札制度に参加することで、以下の無形資産を蓄積できます:

  • 制度理解: 入札制度や手続きに関する知識・経験
  • ネットワーク: 発注機関や同業他社との関係
  • 信用力: 継続的な参加による信頼関係の構築

まとめ

創業時の定款作成は、将来の入札参加を左右する重要な戦略的判断です。事業目的の適切な記載、資本金の戦略的設定、必要な体制の早期構築により、新設法人であっても効果的に入札市場への参入を図ることができます。

特に重要なのは、法的要件を満たすだけでなく、将来の事業展開を見据えた包括的な準備を行うことです。行政書士などの専門家と連携し、創業時から戦略的な準備を進めることで、競争力のある事業基盤を構築することが可能となります。


参考情報


本記事は2025年8月2日時点の法令・制度に基づいて作成されています。最新の情報については、各関係機関にご確認ください。

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