行政書士向け入札案件!2,600万円超の空き家所有者調査業務で落札を目指す入札参加ガイド
近年、日本の社会問題として深刻化している「空き家問題」。総務省の調査によると、2023年には全国の空き家が過去最多の900万戸に達し、その数は今後も増加の一途をたどると予測されています[1]。この問題に対し、国や地方自治体は「空家等対策の推進に関する特別措置法」を改正するなど、対策を強化しています。
こうした状況の中、専門家としてその解決に貢献できる存在として、行政書士に大きな期待が寄せられています。特に、空き家の所有者を特定する「所有者調査」は、行政書士が持つ公簿の読解能力や権利関係の知識を最大限に活かせる業務であり、公共調達の分野で新たなビジネスチャンスとして注目を集めているのです。
本記事では、行政書士がこの「空き家所有者調査」業務で、いかにして安定した収益を確保し、社会貢献を実現できるのか、具体的な落札実績や仕様書を交えながら、その全貌と参入戦略を徹底解説します。
【驚愕の実績】京都府行政書士会は年間2,600万円超えも!落札実績を徹底分析
「空き家調査がビジネスチャンスになると言っても、実際のところ、どれくらいの規模の案件があるのか?」
そう思われる方も多いでしょう。そこで、具体的なイメージを持っていただくために、京都府行政書士会の驚くべき落札実績を見てみましょう。入札情報速報サービス「nSearch」のデータによると、京都府行政書士会は京都市関連の業務を継続的に受注しており、中には2,000万円を超える大規模案件も含まれています[2]。
契約日 | 発注機関 | 契約方式 | 落札金額(円) |
---|---|---|---|
2021年4月1日 | 京都市住宅供給公社 | 企画競争 | 26,250,000 |
2020年6月18日 | 京都市産業観光局 | 随意契約 | 25,000,000 |
2020年6月25日 | 京都市都市計画局 | 企画競争 | 18,361,500 |
2022年3月31日 | 京都市都市計画局 | 指名競争入札 | 12,068,182 |
2020年8月18日 | 京都市都市計画局 | 企画競争 | 11,000,000 |
2021年1月15日 | 京都市産業観光局 | 随意契約 | 7,909,091 |
この表からわかるように、京都府行政書士会は、企画競争、指名競争入札、随意契約といった多様な契約方式で、京都市の複数の部局から安定的に高額案件を受注しています。これは、個々の行政書士が単独で活動するのではなく、「行政書士会」という組織として、専門性と信頼性を武器に、自治体との強固なパートナーシップを築いている成功事例と言えるでしょう。
仕様書から読み解く!「空き家所有者調査」の具体的な業務内容
では、実際にどのような業務を行うのでしょうか。ここでは、京都市が実際に公募した「令和7年度空き家の所有者等調査業務委託」の公告内容を参考に、具体的な業務内容を解説します[3]。
【京都市 令和7年度空き家の所有者等調査業務委託 公告】
業務名: 令和7年度空き家の所有者等調査業務委託 業務内容: 管理不全状態のおそれがある空き家の所有者等調査業務 選定方式: 簡易公募型プロポーザル 受託候補者: 京都府行政書士会 想定依頼案件数: 240件
この案件では、主に以下の業務を行うことが求められます。
- 現地調査: 対象となる空き家の状況(建物の損傷、敷地の状況など)を現地で確認します。
- 公簿調査: 住民票、戸籍(除籍、改製原戸籍を含む)、登記事項証明書、固定資産課税台帳などの公的な記録を取り寄せ、所有者を特定します。
- 相続人関係図の作成: 所有者が死亡している場合、戸籍を遡って相続人を確定し、相続人関係図を作成します。これには、数次相続が発生している複雑な案件も含まれます。
- 調査報告書の作成: 上記の調査結果をまとめ、自治体に報告書として提出します。
これらの業務を遂行するためには、公簿を正確に読み解く能力、相続に関する深い知識、そして粘り強い調査能力が不可欠です。まさに、行政書士の専門性が最大限に活かせる業務領域と言えるでしょう。
行政書士が「空き家調査」に参入する4つのメリット
改めて、行政書士がこの業務に参入するメリットを4つの観点から整理します。
- 高い収益性と安定性: 個人の顧客から単発で依頼を受けるのとは異なり、自治体からは年間240件といったまとまった件数で発注されるため、事業の見通しが立てやすく、安定した収益の柱となり得ます。
- 社会貢献性: 深刻化する空き家問題の解決に専門家として直接関与できることは、大きなやりがいと社会的な評価につながります。
- 専門性の発揮: 日頃の業務で培った公簿調査や権利関係の知識を存分に発揮できる、まさに専門家冥利に尽きる業務です。
- 信用の獲得: 公的機関との取引実績は、事務所の信頼性を客観的に証明する何よりの証となります。その後の事業展開においても、大きなアドバンテージとなるでしょう。
開業1年目からでも間に合う!参入への具体的なロードマップ
「これほど魅力的な市場があることはわかったが、具体的に何から始めればいいのか?」という方のために、明日から行動できる具体的なロードマップを4つのステップでご紹介します。
ステップ1:情報収集と入札参加資格の取得 まずは、お住まいの自治体や近隣の自治体がどのような案件を公募しているか、情報収集から始めましょう。NJSSや入札王といった入札情報サービスを活用するのが効率的です。同時に、入札に参加するために必要な「全省庁統一資格」や、各自治体が独自に定める入札参加資格の取得を進めましょう。
ステップ2:専門知識の深化と実績作り 相続や不動産登記に関する知識は、常に最新の状態にアップデートしておく必要があります。関連書籍で学んだり、研修に参加したりして、専門性を高めましょう。いきなり大規模案件を受注するのは難しくても、まずは小規模な調査業務や、他の士業の補助者として経験を積むことで、着実に実績を積み上げることができます。
ステップ3:連携体制の構築(JVの活用) 司法書士向けの案件で見たように、大規模な案件では15名以上のチーム体制が求められることもあります。個人で受注するのが難しい場合は、他の行政書士や、司法書士、土地家屋調査士といった関連士業と連携し、共同企業体(JV)を組成して入札に参加するのが有効な戦略です。日頃から同業者や他士業とのネットワークを築いておくことが重要になります。
ステップ4:行政書士会の活用 京都府行政書士会の事例が示すように、行政書士会として組織的に案件を受注するモデルは非常に強力です。所属する支部の研修に参加したり、役員に立候補したりするなど、積極的に会務に関与することで、こうした組織的な取り組みの情報を得やすくなり、参画への道も開けるでしょう。
まとめ:行動こそが、新たな市場を切り拓く鍵
空き家問題の深刻化に伴い、その所有者調査業務の需要は、今後ますます高まっていくことが確実です。この市場は、専門知識を持つ行政書士にとって、まさに新たなブルーオーシャンと言えるでしょう。
本記事で紹介した落札実績や業務内容は、ほんの一例に過ぎません。あなたの地域にも、まだ知られていないチャンスが眠っているはずです。ぜひ、本記事を参考に第一歩を踏み出し、行政書士としての新たな可能性を切り拓いてください。
参考文献
[1] 総務省統計局. (2024). 平成30年住宅・土地統計調査. [2] nSearch. 京都府行政書士会の入札結果・落札情報. https://nsearch.jp/rakusatsu_ankens/rakusatsu_kaisha/%E4%BA%AC%E9%83%BD%E5%BA%9C%E8%A1%8C%E6%94%BF%E6%9B%B8%E5%A3%AB%E4%BC%9A [3] 京都市. (2025). 令和7年度空き家の所有者等調査業務委託に関する簡易公募型プロポーザルの選定結果について. https://www.city.kyoto.lg.jp/tokei/page/0000337686.html