はじめに:IT・クリエイティブ業界にも広がる公共入札の世界
「公共入札って、建設業や清掃業のイメージが強くて、うちみたいなWeb制作会社には関係ないと思っていました」
こうおっしゃるお客様が、実はとても多いんです。でも、ここ数年で状況は大きく変わりました。国や自治体のデジタル化が急速に進み、ホームページのリニューアル、業務システムの開発、PR動画の制作、SNS運用の委託など、IT・クリエイティブ系の入札案件は年々増え続けています。
私たちふらっと法務事務所にも、Web制作会社や動画制作会社、システム開発会社の方から「入札に参加してみたいけれど、何から始めればいいのか分からない」というご相談をいただくことが増えました。
この記事では、IT・クリエイティブ業界で働く皆さんが公共入札の世界に一歩踏み出すために必要な知識を、できるだけ分かりやすくまとめました。「入札って難しそう」という先入観を取り払って、新しいビジネスチャンスを一緒に探っていきましょう。
1. IT・クリエイティブ企業が受注できる入札案件とは?
まず気になるのは、「自分たちの仕事に合った案件が本当にあるのか?」ということですよね。結論から言うと、IT・クリエイティブ分野の入札案件は想像以上に幅広く存在します。
主な案件の種類
官公庁や自治体が発注するIT・クリエイティブ系の案件には、たとえば次のようなものがあります。
Web制作・デザイン系
- 自治体の公式ホームページ制作・リニューアル
- 観光PR用のランディングページ制作
- 行政サービスのポータルサイト構築
- バナーやチラシなどの広報物デザイン
システム開発系
- 庁内の業務管理システム開発
- 電子申請システムの構築・保守
- データベースの設計・運用
- ネットワーク機器の設定・管理
動画・映像制作系
- 自治体のPR動画・観光プロモーション映像
- 研修用eラーニング教材の制作
- イベント記録映像の撮影・編集
- SNS向けショート動画の制作
その他のIT関連
- ITコンサルティング・DX推進支援
- 情報セキュリティ監査
- PCやネットワーク機器の調達・設置
- ヘルプデスク・IT運用サポート
こうして並べてみると、「うちの会社でもできそうな案件がある」と感じていただけるのではないでしょうか。特にホームページ制作や動画制作は、比較的小規模な案件も多く、中小企業やフリーランスの方にとっても参入しやすい分野です。
案件の規模感
IT系の入札案件は、数十万円の小規模なものから数億円規模の大型プロジェクトまでさまざまです。初めて入札に参加する場合は、まず100万円〜300万円程度の小規模案件から始めるのがおすすめです。
たとえば、自治体のホームページ部分改修やパンフレットのデザイン、短尺のPR動画制作などは、予算規模が比較的小さく、参加要件も緩やかなことが多いため、最初の一歩として取り組みやすい案件です。
2. 入札に参加するために必要な資格
「入札に参加したい」と思ったとき、最初にやるべきことは入札参加資格の取得です。これがないと、そもそも入札に参加する権利がありません。
全省庁統一資格
国の省庁が発注する案件に参加するためには、「全省庁統一資格」が必要です。名前は少し堅いですが、要するに「国の入札に参加してもいいですよ」という認定のようなものです。
IT・クリエイティブ企業の場合、多くは「役務の提供等」の区分で申請します。Web制作もシステム開発も動画制作も、この区分に該当します。
申請自体は調達ポータル(政府の電子調達システム)からオンラインで行えます。申請に必要な主な書類は以下のとおりです。
- 登記事項証明書(法人の場合)
- 財務諸表(直近の決算書)
- 納税証明書
審査には通常2〜3週間ほどかかりますが、書類に不備がなければスムーズに取得できます。なお、現在の有効期間は令和7・8・9年度(2025年4月〜2028年3月)です。
各自治体の入札参加資格
都道府県や市区町村の案件に参加する場合は、それぞれの自治体が独自に設けている入札参加資格を取得する必要があります。自治体ごとに申請時期や必要書類が異なるため、参加したい自治体のホームページで募集要項を確認しましょう。
多くの自治体では、年に1回の定期受付に加えて、随時受付を行っているところもあります。「次の受付まで待てない」という場合でも、随時受付に対応している自治体なら、すぐに申請を始められます。
資格取得のポイント
資格の申請手続きは、慣れていないと書類の準備や記入に戸惑うことがあります。特に初めての方は、「どの区分で申請すればいいのか」「営業品目はどう書けばいいのか」といった点で迷いがちです。
私たちのような行政書士事務所では、こうした申請手続きのサポートも行っています。「自分でやるのは不安」という方は、専門家に相談するのも一つの手です。
3. 実績がなくても入札に参加できる?
「うちは入札の実績がゼロなんですが、それでも参加できますか?」
このご質問も本当によくいただきます。答えは「はい、参加できます」。
入札実績がなくても大丈夫な理由
入札案件の中には、参加要件として「過去の入札実績」を求めるものもありますが、すべてがそうではありません。特に以下のような案件は、入札実績がなくても参加しやすい傾向があります。
一般競争入札(最低価格落札方式) 資格さえ持っていれば、基本的に誰でも参加できます。過去の入札実績は問われないことがほとんどです。価格が最も安い事業者が落札するシンプルな方式なので、初参加でもチャンスがあります。
少額随意契約 予定価格が一定額以下(国の場合、役務で100万円以下など)の案件は、入札ではなく随意契約で発注されることがあります。こうした案件は参加のハードルが低く、実績づくりに最適です。
最初の実績をつくるための3つのステップ
入札の世界で実績を積み上げていくために、以下のステップをおすすめしています。
ステップ1:小規模案件から始める 最初は100万円前後の小さな案件に絞って探しましょう。ホームページの部分改修、パンフレットのデザイン、短い動画の制作など、自社の得意分野で確実にこなせる案件を選ぶことが大切です。
ステップ2:プロポーザル方式に挑戦する ある程度の業務実績(民間の実績でOKの場合が多い)があれば、プロポーザル方式の案件にも参加できます。プロポーザルは価格だけでなく企画力や技術力が評価されるため、クリエイティブ系の企業にとっては腕の見せどころです。
ステップ3:実績を積みながら対象を広げる 小規模案件で実績を積んだら、徐々に規模の大きな案件や、参加要件の厳しい案件にもチャレンジしていきましょう。入札の世界では、実績が次の案件への切符になります。
4. IT系入札案件の探し方
「資格は取れた。でも、案件はどこで探せばいいの?」
入札案件の情報は、いくつかの方法で入手できます。
公的な情報源
調達ポータル(政府電子調達システム) 国の省庁が発注する案件は、調達ポータル(https://www.p-portal.go.jp/)で公告されます。キーワード検索で「ホームページ」「システム開発」「動画制作」などと入力すれば、関連する案件を見つけられます。
各自治体の入札情報ページ 都道府県や市区町村のホームページには、入札情報を掲載しているページがあります。自社の所在地周辺の自治体はもちろん、リモートワークで対応できる案件なら、全国の自治体を対象に探すことも可能です。
入札情報サービス NJSSやうるるなどの民間の入札情報サービスを利用すると、全国の入札案件を横断的に検索できます。有料サービスですが、案件を効率よく探したい場合には便利です。
案件を探すときのコツ
IT系の案件は、必ずしも「システム開発」「Web制作」といった分かりやすい名称で公告されるとは限りません。「広報業務委託」「情報発信支援業務」「電子化業務」など、少し違った表現で掲載されていることもあります。
検索キーワードを工夫して、幅広く案件を探してみてください。また、過去の落札結果を調べることで、どのような企業がどのくらいの金額で落札しているかも分かります。相場感をつかむためにも、落札結果のチェックはおすすめです。
5. 専門家のサポートを活用する
入札への参加は、資格の取得から案件の選定、書類の作成、入札当日の対応まで、やるべきことが多岐にわたります。本業で忙しい中、これらをすべて自社で対応するのは、なかなか大変です。
私たちふらっと法務事務所では、入札参加資格の申請代行から、案件の選定アドバイス、入札書類の作成サポートまで、入札に関わる一連の業務をお手伝いしています。
入札サポートサービスの内容
月額44,000円(税込)で、以下のようなサポートを受けられます。
- 入札参加資格の申請・更新手続き
- 入札案件の情報提供・選定アドバイス
- 入札書類の作成サポート
- 入札に関する相談(回数無制限)
「まずは話を聞いてみたい」という方も大歓迎です。お気軽にお問い合わせください。
電話: 046-272-3357(平日9時〜17時) メール: mail@flat-legal.com(24時間受付)
まとめ:IT・クリエイティブ企業こそ、入札という選択肢を
公共入札は、民間の営業活動とはまったく異なるルートで仕事を獲得できる、もう一つの事業チャネルです。景気に左右されにくく、支払いも確実。一度実績をつくれば、次の案件にもつながりやすいという特徴があります。
IT・クリエイティブ業界の皆さんが持っている技術力や企画力は、公共調達の世界でも大いに求められています。「入札は自分たちには関係ない」と思い込まず、まずは情報収集から始めてみてください。
この記事が、皆さんの新しいビジネスチャンスへの第一歩になれば、私たちもうれしく思います。
関連記事